今回は無権代理と表見代理について説明していきます。
こんな悩みを今回の記事では解決します。
代理の中でも最大のポイントとなるのがこの2つです。
今回の記事を読んでいただければ次のようなことが理解できます。
- 無権代理とは何か?
- 無権代理の相手方ができることは?
- 表見代理とは何か?
- どんな要件で成立するのか?
具体例を出しながら表見代理と無権代理についてわかりやすく説明していくのでぜひ最後まで読んで頂き理解を深めてください。
目次
無権代理とは?
無権代理とは読んで字のごとく、権利が無いにも関わらず代理を行うことです。
常識的に考えて、権利が無い人が勝手に代理をしたとしてもその取引行為は無効になりますよね。
勝手に自分の家を売ることを知らない人に代理されてしまったら大変なことになります。
よって民法の113条では以下のように規定しています。
第113条
1. 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
無権代理が有効になるケース
無権代理は原則として無効になるということでしたが、例外で有効になるパターンもあります。
それが後から本人が後から追認した場合です。
例えば権利のないBさんが勝手にAさんの家を売ってしまっても、後からAさんが了承したのであれば有効となります。
本人がOKと言っているのなら家を売ってもなんの問題もありませんもんね。
追認の効果はいつから発生する?
では追認の効果がいつから発生するのでしょうか?
民法の116条に次のように定められています。
第116条
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
つまり、もし本人が後から無権代理人の法律行為を追認した場合には、契約の時まで遡って効力を生じます。
無権代理人の相手方の権利
では無権代理人と取引をした相手方はどうなるのでしょうか?
相手は本気で家を購入する気で契約をしたにも関わらず、権利のない代理人のせいでその取引が無効になってしまいます。
これでは無権代理人と取引をした相手方が救われないと考え、民法では相手方に次の3つの権利を与えました。
- 催告権
- 取消権
- 無権代理人への責任追及
1つずつ解説していきます。
催告権
まず1つ目が催告権です。
民法114条には催告権について次のように規定されています。
第114条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
これによって無権代理人との取引の相手は本人に対して、契約を追認するのかどうかを催告をすることができます。
取消権
2つ目の権利が、取消権です。
民法115条には取消権について次のように規定しています。
第115条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
つまり相手方は本人が追認するまでの間は、契約を取り消すことができます。
逆を言えば、本人が追認をした後には取り消し権を行使することができません。
無権代理人への責任追及
3つ目が、無権代理人への責任追及です。
民法117条には次のように規定されています。
第117条
1.他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。2.前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。
つまりこの民法117条によって、相手方はなんの権利もなく代理を行なった無権代理人の責任を追及することができます。
この3つが無権代理人と取引をした相手方が使える権利になります。
表見代理とは?
では表見代理とはどんなことなのでしょうか?
表見代理とは、たとえ無権代理であったとしても外形上は正当な代理権を有しているように見えるため有効な代理行為としてみなすことを言います。
簡単に言うと、無権代理なのにも関わらず有効になってしまうケースが表見代理なのです。
ではどんな条件の時にこの表見代理が成立するのでしょうか?
表見代理の成立要件
表見代理が成立するためには以下の3つの条件が必要になります。
- 本人にも責任がある
- 無権代理行為がされている
- 相手方が善意無過失である
そしてこの3つの条件を満たすパターンが民法109条、110条、112条になります。
ここからは1つずつ説明していきます。
民法109条
表見代理が成立する1つ目の条文の規定が109条になります。
第109条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
109条の具体例

例えば本人Aが代理を頼んでもいないにも関わらずCさんに代理権を与えたよと言う風なことを第三者のBさんに意地表示をしてしまった場合には表見代理が成立します。
代理権を与えてないのにあたかもそのような意思表示をしてしまったAさんに責任がありますよね。
ただこのケースでもしもBさんが、CさんがAさんの代理権を有していないことを知っていた時、または過失によって知らなかった時は例外とされます。
110条
2つ目の表見代理が成立するパターンがこの民法110条になります。
第110条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
110条の具体例
例えば、AさんがBさんにAさんの家借りてくるように代理として頼んでいたにも関わらず、その権限を越えて代理人のBさんが不動産会社のCさんから家を買ってしまったようなケースです。
このケースでもCさんが善意無過失であれば、表見代理が成立することになります。
あくまで賃貸を頼んだのにも関わらず、家を買ってしまうような人を代理人として選んだAさんに責任があると民法では考えるのです。
112条
最後に表見代理が成立する最後のパターンがこの112条になります。
第112条
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
112条の具体例

これはもともとAさんがBさんに大阪の不動産を購入する代理を任せていたとします。
そして無事に代理人のBさんは不動産会社のCからAさんのために不動産を購入しました。
ここで本来ならば代理権は消滅することになりますが、この後にもし代理人であったBさんが不動産会社からAさんの代理人として再度不動産を購入したとします。
この場合には不動産会社CがBさんに代理権がないことに対して善意無過失であれば表見代理が成立します。
これも先ほどの民法110条と一緒で、Bさんのような代理人に頼んだAさんに責任があると考えるのです。
まとめ
今回は今回は無権代理と表見代理について説明してきました。
今回の内容を簡単にまとめると以下のようになります。
- 無権代理とは権利が無いにも関わらず代理を行うこと
- 無権代理の相手方には取消権、催告権、そして無権代理人に責任を追及する権利がある
- 表見代理の成立に関しては民法109条、110条、112条に規定がある
いかがだったでしょうか?
ここをもっと詳しく知りたい!などご要望があればぜひコメントお待ちしております。
それでは最後までお読み頂きありがとうございました!
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