今回は法定地上権の4つの成立要件について説明していきます。
今回はこんな悩みを解決していきます。
この記事を読んでいただければ、次のようなことが最終わかるようになります。
- 法定地上権とは何か?
- 法定地上権はなぜ必要なのか?
- 法定地上権の4つの要件
ぜひ最後まで読んでいただいて、頻出の法定地上権についての知識をマスターしてください!
法定地上権とは?
法定地上権は名前からもわかるように法律が定める権利のことです。
地上権というのは本来であれば契約によって発生する権利のことでした。
しかし、この地上権が契約によってではなく法律によって強制的に成立するものこそ『法定地上権』なのです。
なぜ法定地上権は必要なのか?
ではそもそもなぜ法定地上権は必要なのでしょうか?
法定地上権の必要性に関しては、例題を出しながらわかりやすく説明していきますね。
法定地上権が必要になる経緯
今回の登場人物はAさん、Bさん、Cさんの3人です。
Aさんは土地と建物を所有していました。
しかし、AさんはBさんからお金を借りるために自分の持っている建物にBさんの抵当権を設定することにしました。
最初のうちはAさんは問題なくBさんに返済をできていたのですが、だんだんと返済が遅れるようになり最後には全く返済することができなくなってしまいました。
そこで困ったBさんは抵当権を設定しているAさんの建物を競売してCさんに売ってしまいました。
競売による取得者が『土地利用権』を持っていないと…
さてここでAさんの建物を競売によって取得したCさんですが、建物の所有権は持っていますが土地を利用することができる『土地利用権』を持っていません。
これではもし土地の所有者であるAさんから、土地を利用する権利を持っていないのなら出て行ってくださいと言われるとCさんは断ることができません。
Cさんは競売によって建物を手に入れたのに、すぐに手放さなくてはいけないのです。
もしあなたがCさんだったとしたらどうでしょうか?買ってもすぐに手放さないといけない建物を購入しますか?
きっとしないはずです。
そうなんです。こんな状況で建物を購入する人なんていないのです。でもそれだと抵当権者のBさんは困ってしまいます。
この問題を解決するのが『法定地上権』
そこで登場するのが法定地上権なんです。
法定地上権は今回のケースのCさんに当然に土地の利用権を認める権利のことなのです。
つまりこの法定地上権が成立することで競売によってAさんの建物を手に入れたCさんは土地利用権が認められ問題なく建物を使用することができるのです。
それが民法388条に規定されています。
第388条
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
法定地上権の要件
ではどんな要件を満たす時に法定地上権は成立するのでしょうか?
法定地上権の成立には以下の4つの要件が必要です。
- 抵当権設定時に土地上に建物が存在すること
- 抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属する
- 土地または建物に抵当権が設定されること
- 土地と建物の所有者が競売により異なるに至ること
この4つ全てが揃った時に法定地上権が成立します。
なので先ほどの例で考えるとAさんが土地と建物両方の所有者でなければ法定地上権は成立しませんし、Bさんが抵当権を設定した時に土地の上に建物がなくても成立しません。
法定地上権の問題は宅建試験や行政書士試験、司法試験などいろんな分野で出題されますがこの4つの要件さえ覚えておけばそれほど難しくないはずです。
法定地上権の問題を解いてみよう
では過去に資格試験で出題された法定地上権に関する問題を見てみましょう。
これは平成30年度の宅建試験の問6で出題された法定地上権に関する問題です。
Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ、AがBから乙建物を買い取り、その後、Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。この場合の法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aが乙建物の登記をA名義に移転する前に甲土地に抵当権を設定登記していた場合、甲土地の抵当権が実行されたとしても、乙建物のために法定地上権は成立しない。
- Aが乙建物を取り壊して更地にしてから甲土地に抵当権を設定登記し、その後にAが甲土地上に丙建物を建築していた場合、甲土地の抵当権が実行されたとしても、丙建物のために法定地上権は成立しない。
- Aが甲土地に抵当権を設定登記するのと同時に乙建物にもCのために共同抵当権を設定登記した後、乙建物を取り壊して丙建物を建築し、丙建物にCのために抵当権を設定しないまま甲土地の抵当権が実行された場合、丙建物のために法定地上権は成立しない。
- Aが甲土地に抵当権を設定登記した後、乙建物をDに譲渡した場合、甲土地の抵当権が実行されると、乙建物のために法定地上権が成立する。
①番は一見正解のように見えますね。法定地上権の要件に、『抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属する』というのがありました。
①番ではまだAに名義を変更する前段階でした。
しかし民法では名義上、異なっても、実体的に土地と建物が同一の所有者に属していれば、「抵当権設定時に、土地と建物の所有者が同一であること。」という風にみなすことにしています。
よってこの①番のケースでは全ての要件が満たされ、法定地上権が成立することになります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は法定地上権の4つの成立要件について説明してきました。
今回の内容をまとめると次のようになります。
- 法定地上権とは、法律によって強制的に地上権が発生する権利
- 法定地上権がなければ競売で物件を購入する人がいなくなる。
- 法定地上権は4つの要件が全て揃った時に成立する
今回の内容でわからない箇所や、ここをもっと知りたい!など要望があればぜひコメントお待ちしております。
では最後までお読みいただきありがとうございました。
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