今回は民法192条の『即時取得』の要件について説明してきます。
今回はこんな疑問を解決していきます。
この記事を読んでいただければ次のようなことがわかります。
- 『即時取得は何か?』
- 『即時取得はどんなときに成立するのか?』
- 『即時取得が適応されない場合』
試験でも『即時取得』は出題傾向が高い分野なのでぜひ最後まで読んでみてください。
即時取得とは?
即時取得って一体なんなんだ?と思った方も多いはずです。
ここで分かりやすいように例題を1つ出してみますね。
侍のAさんはとても大切にしている刀を持っていました。
そんな侍のAくんにある時友達の石油王Bくんがこんなことを言ってきました。
こうして侍Aくんは大切な刀を石油王Bくんに1日だけ貸すことになりました。
しかし、この石油王Bさん実はとんでもない悪人だったのです。
そこに偶然桃太郎Cくんが通りかかりました。
さて、こうして侍Aくんの大切な刀は何も知らない桃太郎Cくんの手に渡ることになりました。
何も知らないAさんは勝手に大切な刀をCさんに売られてしまったのです。
ここでのポイントはこの登場人物の中で侍Aくんも、桃太郎Cくんもどちらも善人だということです。
つまり善人VS善人の戦いだと言えます。
では、民法ではこの刀は誰のものだと決めたのでしょうか?
民法192条に即時取得の規定あり
その答えが民法192条に書かれてあります。
民法192条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
民法192条では、取引行為をしたものが善意で、過失がなければその人が権利を取得すると言っています。
つまり、今回の刀の所有者は善意の桃太郎Cくんのものになるのです。
侍Aくんには本当に気の毒な結果ですが、民法はこのように誰かに泣いてもらわないといけない結末が待っています。
善人VS悪人なら悪人に泣いてもらえばそれでいいのですが、今回のように善人VS善人となった時のその結論は難しいですね。
実生活に置き換えるとあなたが大切にしているものを友達に貸していて、それを友達が別の人に売ってしまうとそれは有効な取引となってしまうのです。
知っておかないと怖いですよね。安易に人にものを貸すのはやめましょう笑
盗難の場合にはどうなるの?
では先ほどの例題でもし石油王Bくんが侍Aくんの大切な刀を盗んで桃太郎Cくんに売った時にはどうなるのでしょうか?
この場合には結論が少し変わります。
それはペンを盗まれたAさんを保護してあげないと可哀想だと法律は判断したからです。
そこでこの民法193条が適用されます。
民法193条
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
つまり盗まれてから2年間の間は、AさんはCさんに対して『ぼくの大切なペンを返して』と言える権利があるのです。
しかし2年間を過ぎてしまえばペンはCさんのものになります。
占有改定は即時取得が適用外
即時取得が成立するには動産(刀)の占有が移動することが要件です。
実際にA→B→Cとペンの占有が移動した時に刀の所有権は桃太郎Cさんに移りました。
では、こんなケースではどうなるのでしょうか?
占有改定の例
Aさんの大切な刀を借りたBさんがCさんにその刀を売ろうとしました。
しかし桃太郎Cくんは刀を買うことにしました。しかしこんな風に言うのです。
BさんとCさんの売買行為は成立していますが、刀は石油王Bくんが持ったままの状態です。
この状態のことを民法では『占有改定』と呼びます。
そして結論からいうとこの『占有改定』の状態ではCさんの即時取得は成立しません。
なぜなら現実の引渡しが石油王Bくんから桃太郎Cくんにされていないからです。
実際にBくんからCくんに刀が引き渡されることが必要なんですね。
占有改定以外の、占有物の引渡し方法は別の記事にも書いているのでそちらも参考にしてみてください。

まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は民法192条の『即時取得』の要件について取り上げてみました。
今回の内容をまとめると次のようになります。
- 即時取得は第三者が善意の時に成立する
- 盗難または遺失の場合には2年間は返還を請求できる
- 占有改定の場合には即時取得は成立しない
これって実生活の中でも起こりそうな問題ですよね。
民法を知っておくということは自分や家族のことを守るということにも繋がります。
今後も民法について色々と書いていきますのでぜひ読んでみてください。
では最後までお読み頂きありがとうございました。
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